TOEICのスコアと実生活での英語力のちがい

TOEIC学習

 TOEICで800点というのは、日本では重要な指標ですね。例えば就職(転職)活動において、履歴書にTOEIC 800と書けるのは少し誇らしいかもしれません。受け取る人事側でも、「お、TOEIC 800点か、やるな!」と思ってくれるでしょう。(たぶん!)

 さて、そこで生じる疑問は「TOEICの高スコアは実際の生活における英語力とつながっているのか?」ということです。これはすごく大きな疑問で、英語力を上げるためにTOEICの勉強をして良いものかどうなのか、悩んでしまっている人もいるかと思います。

 実際に、TOEICのスコアが高いにも関わらずあまりコミュニケーションが取れない人がいたり、はたまた、TOEICどころか文法も無茶苦茶なのに、海外でのビジネスで成功を収めている人もいたりします。そこで、TOEICのスコアが高い=英語力、とならない理由、つまりTOEICスコアと実生活での英語力の違いについて整理してみました。

 さらに、英語力を向上するために、TOEICを勉強することの意味についても最後にまとめています。

 

 キーワードは、「論理的なTOEICとごちゃごちゃした実際の英語コミュニケーション」です!

1.TOEICのスコアとは

一般に言われる「TOEIC」

 TOEICは、ETS社が開発し日本・韓国を中心に、世界で使用されているテストです。(と言いつつ、実は世界ではあまり認知されていないので、また折を見てこちらは詳細を解説します)

 TOEICは長年磨き上げて来られたテストで、非常によくできています。多くの企業でも英語力の指標としてTOEICスコアが見られており、就職・転職の際にスコア申告を求められたり、管理職になるための最低スコアが設定されていたりします。こうした場面で問われるTOEICスコアは、日本では「リーディングとリスニングのみ」のTOEICスコアを指すことがほとんどです。

TOEICスコア=共通の尺度で評価してもらえる

 何せそこら中でTOEICのスコアが求められるため、TOEICスコアを持っておくと便利な世の中になっています。そのため、みなさんの周囲でも高い低いを問わなければ一度はTOEICを受けたことがあり、スコアを持っている人が多いことと思います。

 その結果、英語力というよくわからないもの、普通に考えれば評価しにくいものを共通の尺度で、数値で評価してもらえるというのは非常に簡単です。対照的に、例えば「日本語の文章力があります!」と言おうとしても、共通の尺度が無いので本当に力があるかどうか、わからないですよね。このように、TOEICスコアは本来わかりにくい“英語力”を簡単に表現してくれるツール、と言えます。

2.TOEICの勉強(高スコアを取る方法)

 このように、社会で広く使われているTOEICスコア、どうやって勉強をすれば高得点が取れるのでしょうか?具体的なやり方は後日アップする記事に譲り、ここではコンセプトだけまとめます。

TOEICは選択式であるため、ハズレ消去スキルを磨くべき

 TOEICのテストとしての特徴は、選択式であることです。5つの選択肢から一つを選び、正解であればスコアが加算される形です。さらに正確にいうと、スコアは偏差値となります。難しいことは脇におくと、受験者の中での正解した数のランキング=TOEICスコア、とやや乱暴にまとめることができます。

 選択式テストにおけるコツは、正しい知識が無くてもスコアが取れる、ということです。ヤマカンで正解でもスコアは加算されます。ではヤマカンの正解率が若干上がる裏技があったらどうでしょう。英語力は全然変わらなくても、スコアは向上してしまうのです。この裏技というのが、ハズレ選択肢を除く、というワザです。

ハズレ消去で確率を高められるとTOEICスコアは上がる

 ハズレの選択肢が除けるとどうなるか、というと、5択における普通のヤマカンは5分の1、つまり20%の正解率になります。では4択になると4分の1で25%、3択になると3分の1で33%、2択になると2分の1で50%になります。5択と2択だと正解率が実に2.5倍(!)にも上がっています。

 このように、ハズレを消去できるだけで正解率は上がるのです。一切英語力が向上していないにも関わらず。※私はこの方法を見つけ、勉強ゼロで300点近くスコアが向上しました。

 2択に持ち込むには、3つの選択肢にバツをつけられればOKです。この「3つにバツをつける」ことは、「唯一の正解を見つける」ことよりもずいぶん簡単にできてしまったりします。

3.実生活で求められる英語力とは

 TOEICから一旦離れて、では実際の生活における英語力とはどんなものでしょうか。ここでは、旅行など短期的なものではなく、仕事や社会生活におけるコミュニケーションを想定します。例えば、同僚、友達、恋人、親しい人々、あまり親しくないけれどもコミュニケーションを取る必要がある人々、と話すとイメージしてみてください。

 英語でコミュニケーションをするには重要な要素が2つあります。相手を理解すること、相手がわかってくれるように話をすること、です。

相手を理解すること

 会話が始まると、まずトピックが何なのか最初に理解しないことには会話になりません。ランチをどこで食べるのか、その後にどこに行くのか、はたまた全く脈絡無く出てきた腹の立つ友達に関する愚痴なのか、なんのトピックかを理解する必要があります。

 続いて、そのトピックに対して話をしている相手はどう思っているのか、何を考えているのか、ふんふん、とうなづきながら内容を理解していきます。複雑な話になると、ここでこんがらがって置いてけぼりになります。

 更に、相手がその話を持ち出してきている背景、例えば、みなさんからアドバイスがほしい、逆にみなさんに聞いてほしいだけ、といったことをわかって初めて、「相手を理解した」となります。(非常に基本的なレベルの理解ですが)

相手がわかってくれるように話をすること

 もう一つ、コミュニケーションが成立するには、みなさんも話をすることになります。自分が考えていることを整理して、表現することばを選び、話し方を選びながら話をしていきます。このときに、相手が理解できる形で話しをすることが重要なのは言うまでもありません。子供に話をするとき、すごく簡単で平易なことばを使って話をしますよね。要は相手がわかるように、相手に合わせて話し方を調整しているわけです。

 このコミュニケーションに求められるものは、日本語でも英語でも大きく違うわけではありません。相手を理解し、相手がわかってくれるように話しをする、簡単なようで難しい日常の営みです。

4.TOEICと実生活での英語のちがい

 さて、TOEIC高得点のための勉強法と、実生活で求められる英語力をざっくり整理してきましたが、その2つはつながっているのでしょうか。みなさんも、そろそろ疑問に感じだしていますよね。正直なところ、私は完全にはつながっていないと考えています。この2つの間に横たわるギャップを明らかにしてみます。

1)受け取りと発信

 TOEICと実生活の最初のちがいは、受け取りと発信がセットで延々と続く、ということです。TOEICは選択して終わり。対して実際のコミュニケーションは・・・

A「今日はランチどこに行こうか?」

B「うーん、ちょっと胃の調子が良くないからどこが良いかな・・・」

A「そういえば仕事関係で忘年会続いてるって言ってたよね。仕事はどう?」

B「仕事はすごい楽しくて良いんだけど、飲み会はちょっと多すぎかな。ランチ食べながら話そうか!」

といった具合に、延々と続いていきます。話しのトピックがそれることもあれば、戻ってくることもあります。全部の話を完結する必要も無ければ、意味の無い(ように見える)話しが入ることも多々あります。

 実際のコミュニケーションはそうした受け取りと発信が交互に続く、ダイナミックなものなのです。そのため、“静的な”TOEICは一回選んで終わり、正解も存在する、という点で大きく異なると言えます。

2)背景の理解

 わたしたちは、生活の中でコミュニケーションをする際、いろいろな前提に基づいて話を展開しています。日本人であればこういう常識はあるもんだ、という前提、こういう場面では空気を読んでこうだ、という前提。様々です。

 こうした前提を読んで、理解して、あるいは想像して初めて、コミュニケーションが成立しています。これは外国人(日本人以外)と話をするときに一層重要になります。インド人と話すのであればインドはどうなっているかな、と考えながら話をし、また聞きます。中国人と話すのであれば中国の状況や社会をイメージしないとコミュニケーションが上手く取れません。同時に、日本人が持っている背景・常識を理解して話をしていかないと相手もポカーンとなってしまいます。

 TOEICでは、敢えてこうした前提が入らないように設計されています。単にその場で表現されていること、その場面で話されたことば、そうしたテスト内の情報だけで回答が選べるようにできているのです。(そうしないと、国際経験がある人だけがスコアを取れてしまって、英語の標準テストとしてのTOEICの信頼性が下がってしまうのです)

 こうした背景・前提の理解は英語でのコミュニケーションでは一層重要になりますが、TOEICでは測れない設計になっているのです。

3)翻訳における誤解:言葉は一対一で翻訳されない

 よくある誤解に、「日本語の文章だけ渡せば英語に翻訳できる」というものがあります。私は仕事において、よくメール文章の翻訳を依頼されるのですが物凄く困ります。何故かと言うと、その部分だけ渡されても、前後のつながりや、相手とのこれまでのコミュニケーションによって、翻訳の仕方が大きく異なるからです。ベタな例ですが、日本語でよくある「この間ご依頼頂いた件、善処します」といった回答は、

・本気で取り組んで解決策を出すのか

・単なる時間稼ぎなのか

・そもそも取り組むつもりがない、間接的なお断りなのか

のいずれのニュアンスかは前後関係がわからないと翻訳のしようがありません。ご想像の通り、全く違う英文になります。

 別の例では、「大きい家」というシンプルな言葉でも、Large house、Huge house、Mansionのいずれをいうかで印象が大きく異なります。一対一で翻訳できるなんていうことは無いのです。

 このように、実際の英語コミュニケーションでは、単なる翻訳ではなく、いろんなものをごった煮にして翻訳して理解あるいは話しをしていきます。ところがTOEICではこのようなごった煮はむしろ起きないように工夫がなされており、シンプルになっています。

4)ゼロから何かを理解する、生み出すのがコミュニケーション

 TOEICでは、いつも会話をまともに取り合って返事をすることになります。また、問題は論理的で筋が通っています。

 対して、実際の生活においては山程のナンセンスや不合理が散らばっており、取捨選択しながら、コミュニケーションしたいことをより分けて行かないといけません。つまり、出てきた話を取り合うかどうかを決めるところから、ゼロから理解して生み出していくのが英語のコミュニケーションで求められることなのです。そして何かを言おうとしたときに、選択肢は誰も差し出してくれません。スパッと一言でいうか、文章でいうか、延々と5分間話し続けるか、それも自由です。相手のはなしを聞くかどうかも自由です。

 実生活では、ゼロベースで判断してコミュニケーションをしていきますが、TOEICはすごく整理されていて、ある意味狭い範囲での判断だけでOK、となっています。

5)TOEICと実生活の英語、ちがいのまとめ

 このように、TOEICは物凄く整理され、限定された範囲での英語力を見られるようにデザインされています。その論理的なデザインゆえに、標準英語テストとしての地位を確立しています。引き換えに、もっとごちゃごちゃした現実でのコミュニケーションにおいて求められる英語力とちがいができてしまっているのです。

5.TOEICの勉強は実生活で役に立つ?立たない?

 ではTOEICの勉強は実生活での英語コミュニケーションを改善する上で無意味なのでしょうか?これも極端ですね。私の考えは、「TOEICは実生活で使える英語力の土台にはなりうるが、TOEICだけではだめ」です。

 TOEICは論理的に整理され、すごくすっきりした英語力のチェックになっています。TOEICでスコアを取れるようになるのは、「実生活で役立つ英語力」における入り口と言えます。

 

TOEIC学習は英語の基礎を押さえる通り道として便利

 TOEICの便利なところは、よくできたデザインであり、いろいろなところで研究がなされているため、勉強しやすいという点があげられます。様々な教材があり、むしろ選ぶのが難しいほどです。

 こうした洗練されたTOEICの教材を通じて、効率的に基礎を習得していくと自然とTOEICのスコアも上がっていきます。特に、TOEICで確認される文法やボキャブラリー、フレーズ(イディオム)は実生活でも必須のものばかり。TOEICの勉強を通じて習得しておいて損は全くありません。むしろ、実際に使える上にTOEICスコアも上がってしまうので、お得です!

TOEIC800点までは何も考えずにフォーカスしてOK

 TOEICだけでは実際の英語力として不十分とすると、どこまでTOEICを追い求めれば良いか、気になってきます。結論は、800点です。800点くらいになると、旅行程度の英語は全く問題無く、トラブルが起きても何とかなります。また、ゆっくり何度も繰り返しができる・時間がかけられるものであれば理解する・されることにも問題はありません。例えば、英語のウェブサイトを読む、Instagramで英語でメッセージを送る、TEDのプレゼンテーションを字幕入りで見る、DVDで映画を見る、といったことです。英語のメールもそれなりに大丈夫です。

800を超えたら、それ以上は要らない

 800点を超えたら、そこからは「現実の世界で使える英語力」を鍛える世界に突入します。これは全く別次元で、キリがありません。例えば、電話でクレームを入れて30分間粘った挙げ句、上席者を出してもらって補償交渉をする、といったことができるようになるには、TOEICの勉強をいくら続けても進歩しません。

 800点というのは、「テスト」「お勉強」レベルとしてはもう十分なのです。それよりも実際に英語を使う、英語を使って成果を得る、ということができるようにすべく”使うトレーニング“を積んで行く必要があります。この段階でTOEIC他のテストにこだわりすぎると時間ばかり浪費してしまいます。楽しく英語でコミュニケーションが取れる、仕事ができる、生活ができる世界に向けて、切り替えは800点、ですね。

800を超えてもいわゆるテスト勉強の継続が必要なケース

 私自身経験しましたが、留学をする場合、TOEFLというテストでスコアを出す必要があります。感覚的には、TOEICの20倍くらいしんどいです。※当社比

 こうしたケースでは、より文法的な正確さ、幅広いボキャブラリー、スピードを求めてテスト勉強を継続する必要があります。また、英語ネイティブの国に住むことを目指している人たちもテスト勉強的な、理論学習の重要性は高いのかも知れません。

 ただ、そうした人たちはおそらくTOEICは一切気にしていないか、通過点として通過してしまっているのではないかなと思います。

6.まとめ

 いかがでしたか?この記事は私の経験に基づいて書かれています。もし何か付け加えることがあれば、お気軽にコメント頂けましたら幸いです。

 なんだかんだと書いてきましたが、TOEICはすごく便利なので、800点を超えるまでは何も脇見をせずに、TOEIC向けの勉強だけしっかりする、という取り組みで良いのではないかなとも思っています。

 

 みなさんの英語学習&TOEICに向けた勉強が実りのあるものになりますように!

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